
春燈賞(抄)25句 自選
白粥の命の香り冬はじめ
新しき星座描かむ星冴ゆる
過ぎ越しし時を温めて日向ぼこ
どんど焼筐底の文供とせり
寒北斗仰ぎて遠し閑子の忌
わがままな雲を映して水温む
切通しそよ吹く梅の風に逢ふ
散りきらぬ梅の愁ひも実朝忌
鶯の声明に似て時逝きぬ
花の莟空の夕映え明日を待つ
鳥帰る相模大山晴るる日に
北蔭の落花の風趣優りけり
遠富士に雲の羽衣仏生会
いとけなく甘茶の海の童仏
花過ぎて葉桜多く語り出す
爽立てる松や裾濃に五月富士
万国旗そよぐかに風の牡丹園
草笛やむかし兄居て弟も
明易の松濤を聞く旅心
紫陽花の七色の旅終はる頃
この星の命の不思議魂送り
文弱に硯の重さ洗ひけり
牽牛花空の藍より濃かりけり
夏痩せて枯淡の風姿ありやなし
潮さびの島歌を聞く夏の果